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あなたが支払った一時払い生命保険料の節税:控除の計算と申告方法を解説

Tags: 一時払い保険, 生命保険料控除, 節税, 年末調整, 確定申告

はじめに:一時払い保険と節税について

既に保険に加入されている方の中には、保険料を毎月や毎年支払うのではなく、契約時にまとめて一度に払い込む「一時払い」の生命保険に加入されている方もいらっしゃるかもしれません。

通常の保険料支払いの場合は、支払った保険料が生命保険料控除の対象となり、税金が安くなる(節税になる)可能性があることはご存じの方も多いでしょう。では、一時払いの場合、その保険料はどのように生命保険料控除に影響するのでしょうか。

この記事では、一時払い生命保険料が生命保険料控除の対象となる仕組みと、具体的な控除額の計算方法、そして年末調整や確定申告でどのように申告すれば良いのかを分かりやすく解説します。ご自身の一時払い保険契約が節税にどうつながるのか、確認する際の参考にしてください。

一時払い生命保険料も生命保険料控除の対象になる?

生命保険料控除とは、1年間に支払った生命保険料に応じて、一定額がその年の所得から差し引かれる(控除される)制度です。所得から差し引かれる額が増えると、課税される所得額が減るため、結果として所得税や住民税の負担が軽くなります。

一時払い生命保険料も、この生命保険料控除の対象となる場合があります。ただし、通常の年間払いとは計算方法が少し異なります。

生命保険料控除の対象となる保険は、保険の種類によって以下の3つに分けられます。

一時払い生命保険がこれらのいずれかの控除の対象となる場合、払い込んだ一時払い保険料は、その年以降の生命保険料控除の計算に用いることができます。

一時払い保険料の控除額はこう計算する

一時払い生命保険料の場合、保険料を一度に多額支払いますが、その全額がその年一度きりの控除対象になるわけではありません。払い込んだ保険料を基に、「各年に支払った保険料とみなす額」を計算し、その額を用いて生命保険料控除を計算します。

具体的な計算方法は、保険契約の種類や加入時期(新制度・旧制度)によって異なります。

新制度の場合(平成24年1月1日以後に締結した保険契約など)

新制度では、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料のそれぞれについて、以下の計算方法で控除額を算出します。

一時払いの保険契約の場合:

「その年の一時払保険料」 ÷ 「保険期間(年)」 = 各年の払込保険料とみなす額

例えば、保険期間10年の生命保険で一時払い保険料100万円を支払った場合: 100万円 ÷ 10年 = 10万円

この10万円が、保険期間中の各年において「その年に支払った保険料」とみなされ、生命保険料控除額の計算に用いられます。ただし、この「各年の払込保険料とみなす額」には上限が設けられています。

新制度における各年の控除額計算に用いる保険料の上限は8万円です。したがって、上記の例で計算された10万円は8万円に調整され、各年8万円を「その年に支払った保険料」として控除額を計算することになります。

各生命保険料控除の区分(一般、介護医療、個人年金)ごとに、以下の表に基づいて控除額を計算します。

| その年に支払った保険料等 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 | | :------------------------- | :----------------- | :----------------- | | 1.2万円以下 | 支払った保険料等の全額 | 支払った保険料等の全額 | | 1.2万円超 3.2万円以下 | 支払った保険料等 × 1/2 + 0.6万円 | 支払った保険料等 × 1/2 + 0.4万円 | | 3.2万円超 5.6万円以下 | 支払った保険料等 × 1/4 + 1.4万円 | 支払った保険料等 × 1/4 + 1.2万円 | | 5.6万円超 8万円以下 | 支払った保険料等 × 1/4 + 1.4万円 | 2.8万円 | | 8万円超 | 4万円 | 2.8万円 |

(※所得税、住民税それぞれに上限額があります。各区分の合計控除額にも上限があります。)

上記の例で、各年の払込保険料とみなす額が8万円の場合、所得税の控除額は4万円、住民税の控除額は2.8万円となります。(他の生命保険契約がないと仮定した場合)

旧制度の場合(平成23年12月31日以前に締結した保険契約など)

旧制度では、一般生命保険料と個人年金保険料の2つの区分のみでした。介護医療保険料控除はありませんでした。計算方法は新制度と異なります。

一時払いの保険契約の場合:

払い込んだ一時払保険料を、保険期間に応じて各年に振り分け、その金額を用いて旧制度の控除額を計算します。各年の払込保険料とみなす額の計算方法や上限も新制度とは異なりますが、原則として、その年の控除額計算に用いる保険料は以下の上限が適用されます。

旧制度における各年の控除額計算に用いる保険料の上限は9万円です。

旧制度における各生命保険料控除の区分(一般生命保険料、個人年金保険料)ごとに、以下の表に基づいて控除額を計算します。

| その年に支払った保険料等 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 | | :------------------------- | :----------------- | :----------------- | | 2.5万円以下 | 支払った保険料等の全額 | 支払った保険料等の全額 | | 2.5万円超 5万円以下 | 支払った保険料等 × 1/2 + 1.25万円 | 支払った保険料等 × 1/2 + 0.75万円 | | 5万円超 10万円以下 | 支払った保険料等 × 1/4 + 2.5万円 | 1.75万円 | | 10万円超 | 5万円 | 1.75万円 |

(※所得税、住民税それぞれに上限額があります。各区分の合計控除額にも上限があります。)

旧制度の一時払い生命保険の場合も、一時払い保険料を保険期間で割った額(上限9万円)を各年の支払保険料とみなし、上記の表で控除額を計算します。

【注意点】一時払い個人年金保険について

個人年金保険の場合、一時払いのものは原則として生命保険料控除の対象となりません。個人年金保険料控除の対象となるためには、税制適格特約が付加されており、かつ「保険料の払込期間が10年以上であること」「年金支払開始日までに保険料の払い込みが終わっていないこと」などの要件を満たす必要があります。一時払いはこの要件を満たさないため、控除の対象外となります。

年末調整・確定申告での手続き

一時払い生命保険料を生命保険料控除として申告する際も、基本的には通常の保険契約と同様に手続きを行います。

保険料控除証明書の確認

一時払い保険契約についても、保険会社から「生命保険料控除証明書」が発行されます。この証明書に、その年に生命保険料控除の対象となる「その年に支払った保険料等」の金額が記載されています。一時払いの場合は、保険期間に応じて割り振られた金額(上限適用後の金額)が記載されていることを確認しましょう。

申告書の記入

会社員の方は年末調整、個人事業主や副業をしている方などは確定申告で、生命保険料控除を申告します。

一時払いの保険契約の場合も、証明書に記載された金額を該当する控除区分(一般、介護医療、個人年金 ※一時払いは対象外が多い)の欄に記入します。複数契約がある場合は、区分ごとに合計して記入します。

一時払い保険料と節税に関する注意点

まとめ

一時払い生命保険料も、保険期間に応じて各年に割り振られた金額が、生命保険料控除の対象となり得ます。この対象となる金額は、保険期間と一時払い保険料、そして新旧制度の上限によって計算されます。

生命保険料控除を受けるためには、保険会社から送付される生命保険料控除証明書を確認し、年末調整や確定申告で正しく申告することが必要です。

一時払い保険契約をお持ちで、ご自身の保険がどのくらい節税につながるのか知りたい場合は、保険会社から届く控除証明書を確認するか、保険会社に問い合わせてみることをお勧めします。そして、税金に関する具体的な計算や申告方法で不明な点があれば、税務署や税理士などの専門家にご相談ください。

ご自身の保険契約内容と節税効果を正しく理解し、家計管理に役立てていきましょう。