あなたが支払った火災保険料・地震保険料で節税!損害保険料控除の仕組みと計算方法
火災保険や地震保険の保険料も税金が安くなる?損害保険料控除を知る
日々の生活を守るために加入している火災保険や地震保険。これらの保険料も、実は税金負担を軽減する「損害保険料控除」という制度の対象になる場合があります。
生命保険料控除と比べてあまり知られていないかもしれませんが、正しく申告することで所得税や住民税の負担を軽くすることができます。この記事では、損害保険料控除の仕組みや、ご自身の保険料がいくら控除の対象になるのか、どのように申告するのかを分かりやすく解説します。
損害保険料控除とは何か?
損害保険料控除は、ご自身や生計を一つにする配偶者、その他の親族などが所有する建物や家財などを対象とした特定の損害保険契約について、支払った保険料に応じて一定額を所得から差し引くことができる制度です。これにより、課税対象となる所得が減り、結果として所得税や住民税の負担が軽くなります。
これは「所得控除」の一種です。所得控除とは、個人の事情に合わせて所得から差し引くことができる金額のことで、扶養家族がいる場合の扶養控除や、医療費を多く支払った場合の医療費控除など、様々な種類があります。損害保険料控除も、こうした所得控除の一つとして所得税法等で定められています。
損害保険料控除の対象となる保険
損害保険料控除の対象となるのは、主に以下の二つの区分に分けられる保険契約です。
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地震保険契約等にかかる地震等損害部分の保険料
- 居住用の建物または生活用動産を対象とした地震保険契約が該当します。
- 火災保険とセットになっている場合でも、地震等による損害部分に対応する保険料が対象となります。
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旧長期損害保険契約にかかる保険料
- 平成18年末までに締結され、保険期間が10年以上、かつ満期返戻金があるなど、特定の要件を満たす長期の損害保険契約が該当します。
- 例えば、かつて加入していた積立型の火災保険などがこれに該当する場合があります。現在は新規の加入はできませんが、既存契約が要件を満たせば控除の対象となります。
対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに支払いが完了した保険料です。
損害保険料控除の控除額の計算方法と上限
損害保険料控除の控除額は、支払った保険料の金額に応じて定められています。地震保険料と旧長期損害保険料では計算方法や上限額が異なります。
地震保険料にかかる控除額
支払った地震保険料の合計額に応じて、以下の金額が所得から控除されます。
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所得税の控除額:
- 支払った地震保険料の合計額が5万円以下の場合:支払った保険料の全額
- 支払った地震保険料の合計額が5万円超の場合:一律5万円
- つまり、所得税における地震保険料控除の上限額は年間5万円です。
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住民税の控除額:
- 支払った地震保険料の合計額が1万5千円以下の場合:支払った保険料の全額
- 支払った地震保険料の合計額が1万5千円超3万円以下の場合:支払った保険料の合計額 × 1/2 + 7千5百円
- 支払った地震保険料の合計額が3万円超の場合:一律2万5千円
- 住民税における地震保険料控除の上限額は年間2万5千円です。
旧長期損害保険料にかかる控除額
平成18年末までに締結された特定の長期損害保険契約で、要件を満たすものに適用されます。
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所得税の控除額:
- 支払った旧長期損害保険料の合計額が1万円以下の場合:支払った保険料の全額
- 支払った旧長期損害保険料の合計額が1万円超2万円以下の場合:支払った保険料の合計額 × 1/2 + 5千円
- 支払った旧長期損害保険料の合計額が2万円超の場合:一律1万5千円
- 所得税における旧長期損害保険料控除の上限額は年間1万5千円です。
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住民税の控除額:
- 支払った旧長期損害保険料の合計額が5千円以下の場合:支払った保険料の全額
- 支払った旧長期損害保険料の合計額が5千円超1万5千円以下の場合:支払った保険料の合計額 × 1/2 + 2千5百円
- 支払った旧長期損害保険料の合計額が1万5千円超の場合:一律1万円
- 住民税における旧長期損害保険料控除の上限額は年間1万円です。
地震保険料と旧長期損害保険料の両方がある場合
両方の種類の保険契約がある場合、それぞれの控除額を合計することができますが、控除額には合計の上限が設けられています。
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所得税の控除額:
- 地震保険料にかかる控除額と旧長期損害保険料にかかる控除額を合計します。
- ただし、合計額の上限は年間5万円です。
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住民税の控除額:
- 地震保険料にかかる控除額と旧長期損害保険料にかかる控除額を合計します。
- ただし、合計額の上限は年間2万5千円です。
控除額のイメージ(所得税)
例えば、年間に地震保険料を3万円、旧長期損害保険料を1万円支払っている場合を考えてみましょう。
- 地震保険料にかかる控除額:3万円(5万円以下なので全額)
- 旧長期損害保険料にかかる控除額:1万円(1万円以下なので全額)
- 合計控除額:3万円 + 1万円 = 4万円
この場合、合計額4万円は所得税の上限5万円を下回るため、所得税から4万円を控除できる可能性があります。(実際の税額軽減効果は所得税率によります)
住民税の計算も同様ですが、上限額が異なる点に注意が必要です。
損害保険料控除の申告方法
損害保険料控除を受けるためには、年末調整または確定申告で手続きが必要です。
年末調整で申告する場合(会社員など)
会社員や公務員などで年末調整を受ける方は、勤務先に以下の書類を提出します。
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 損害保険料控除証明書
年末調整の時期(通常は11月頃)になると、保険会社から「損害保険料控除証明書」が送られてきます。この証明書に記載された年間支払見込額や支払済額を確認し、申告書に必要事項を記入します。記入した申告書に証明書を添付して勤務先に提出すれば手続きは完了です。
確定申告で申告する場合(個人事業主など、または年末調整で申告し忘れた場合)
個人事業主の方や、年末調整で申告し忘れた方は、ご自身で確定申告を行う際に申告します。
- 確定申告書
- 損害保険料控除証明書
確定申告書の所定の欄に、損害保険料控除証明書を確認して支払った保険料の金額などを記入します。確定申告書に証明書を添付して税務署に提出することで手続きが完了します。e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用して電子的に申告することも可能です。
既加入者が確認すべきポイント
ご自身が損害保険料控除の対象となる保険に加入しているか、そしていくら控除できる可能性があるのかを確認するために、以下の点をチェックしてみましょう。
- 加入している損害保険の種類: 火災保険や地震保険に加入していますか?特に地震保険は、ほぼ確実に損害保険料控除の対象となります。
- 保険契約の締結時期と期間: 平成18年末以前に加入した長期の損害保険契約(積立型など)で、10年以上の期間や満期返戻金などの要件を満たすものはありませんか?これらは旧長期損害保険料控除の対象となる可能性があります。
- 保険料控除証明書の確認: 保険会社から送られてくる「損害保険料控除証明書」を確認しましょう。この証明書には、その保険契約が損害保険料控除(地震保険料控除、旧長期損害保険料控除)の対象となるかどうか、そしてその年に支払った保険料の金額が記載されています。証明書が見当たらない場合は、保険会社に再発行を依頼することができます。
これらの情報を確認することで、ご自身の保険契約が損害保険料控除の対象となるか、そしていくら控除できるかの目安を知ることができます。
まとめと注意点
火災保険や地震保険などの損害保険も、要件を満たせば損害保険料控除として所得控除の対象となり、所得税や住民税の節税につながる可能性があります。特に地震保険は多くの方が加入しており、控除の対象となりますので、年末調整や確定申告の際に忘れずに申告しましょう。
損害保険料控除の申告には、保険会社から送付される「損害保険料控除証明書」が必要不可欠です。大切に保管し、申告時に活用してください。
なお、税法は将来的に変更される可能性があります。また、ご自身の具体的な所得や控除の状況によって税金計算は複雑になる場合があります。この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務に関するアドバイスではありません。最新の正確な情報やご自身の具体的な状況については、必ず税務署や税理士などの専門家にご確認ください。