保険料控除を確定申告で申告する方法と必要な書類
確定申告で保険料控除を申告するとは
会社員や公務員の方は、通常、年末調整で生命保険料控除などの保険料控除を申告します。しかし、年末調整で申告を忘れてしまったり、あるいは自営業やフリーランスの方など、もともと年末調整の対象ではない方は、ご自身で確定申告を行う際に保険料控除を申告する必要があります。
確定申告で保険料控除を適切に申告することで、課税される所得金額を減らすことができ、結果として納める所得税や住民税を少なくすることが可能です。この手続きは、ご自身の税負担を軽減するために非常に重要となります。
この記事では、確定申告で保険料控除を申告する際の方法や、必要となる書類について分かりやすく解説します。
確定申告で申告できる保険料控除の種類
確定申告で申告できる保険料控除は、年末調整と同様に、主に以下の3種類です。
- 一般生命保険料控除: 死亡保険や生存保険など、万が一の場合に備えるための生命保険に関する控除です。
- 介護医療保険料控除: 入院や通院に備える医療保険、介護が必要になった場合に備える介護保険に関する控除です。
- 個人年金保険料控除: 将来の年金として積み立てる個人年金保険に関する控除です。ただし、この控除の対象となるためには、一定の要件を満たす「個人年金保険料税制適格特約」が付加されている必要があります。
これらの控除を合計した金額が、一定の上限額まで所得から差し引かれ、税金計算の対象となる所得(課税所得)が減少します。
確定申告で保険料控除を申告するステップ
確定申告で保険料控除を申告する主なステップは以下の通りです。
1. 必要な書類を準備する
確定申告で保険料控除を申告するために最も重要な書類は、「保険料控除証明書」です。これは、ご加入の保険会社から毎年10月頃に送付される、1年間に支払った保険料の金額や、どの種類の保険料控除の対象となるかが記載された書類です。
- 保険料控除証明書: 各保険会社から郵送または電子データで提供されます。確定申告書に添付、または提出時に提示する必要があります。大切に保管しておきましょう。
- 源泉徴収票(会社員・公務員の方): 年末調整で申告できなかった控除がある場合、会社から発行された源泉徴収票が必要です。
- マイナンバーカードまたは通知カード: 本人確認のために必要です。
- 確定申告書: 税務署のホームページからダウンロードするか、税務署で入手できます。e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用する場合は不要です。
- 印鑑(申告書に押印する場合): e-Taxの場合は不要です。
- 還付を受ける場合の振込先口座情報: 税金が還付される場合に必要です。
2. 確定申告書に記入する
確定申告書には、所得の種類(給与所得、事業所得など)に応じた所定の様式があります。いずれの様式でも、保険料控除を記入する欄が設けられています。
記入箇所は、確定申告書の「所得から差し引かれる金額」の欄にある「生命保険料控除」の項目です。ここに、ご自身の保険料控除証明書を確認しながら、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の区分ごとに支払った保険料の金額を記入します。
記入された保険料の合計額に基づいて、税務署側で控除額が計算されます(新制度・旧制度の区分や、支払った保険料額に応じて控除額の上限が定められています)。
e-Taxを利用する場合も、画面の指示に従って同様に保険料に関する情報を入力します。
3. 保険料控除証明書を添付または提示する
書面で確定申告書を提出する場合は、申告書の「添付書類台紙」などに保険料控除証明書の原本を貼り付けて提出します。e-Taxで提出する場合は、添付を省略できますが、後日税務署から提出を求められることがあるため、原則として5年間は保管しておく必要があります。
4. 確定申告書を提出する
必要事項を記入し、必要書類を添付した確定申告書を税務署に提出します。提出方法は以下のいずれかを選択できます。
- e-Tax: 国税庁のホームページからオンラインで申告できます。添付書類の提出を省略できるなどのメリットがあります。
- 郵送: 所轄の税務署に郵送で提出します。
- 税務署へ持参: 税務署の受付に直接提出します。
確定申告の提出期間は、通常、2月16日から3月15日までですが、税金が還付される「還付申告」の場合は、その年の翌年の1月1日から5年間申告可能です。年末調整で控除を忘れた場合などは還付申告に該当することが多いため、申告期間を過ぎてしまっても還付申告として手続きできる場合があります。
年末調整との違いは?
年末調整と確定申告は、どちらも所得税の計算・精算を行う手続きですが、保険料控除の申告においてはいくつかの違いがあります。
- 手続きを行う主体: 年末調整は勤務先が本人の代わりに手続きを行います。確定申告は本人が自ら手続きを行います。
- 申告できる所得・控除の種類: 年末調整で申告できる所得や控除は限られています(給与所得のみ、生命保険料控除や地震保険料控除など)。確定申告では全ての種類の所得・控除を申告できます。
- 申告期間: 年末調整は通常11月~12月頃に行われます。確定申告の期間は原則2月16日~3月15日ですが、還付申告の場合は1月1日から5年間可能です。
年末調整で保険料控除を申告し忘れた場合でも、確定申告期間中にご自身で確定申告を行うことで、納めすぎた税金の還付を受けることができます。
まとめ
保険の節税効果である保険料控除は、年末調整だけでなく確定申告でも申告することができます。年末調整を忘れてしまった方や、もともと確定申告が必要な自営業の方などは、ご自身で手続きを行うことで税負担を軽減することが可能です。
確定申告での申告には、保険会社から発行される保険料控除証明書が必須となりますので、大切に保管しておきましょう。また、申告書の正確な記入と、決められた期間内(還付申告は5年間)の提出が重要です。
税法は将来的に変更される可能性があります。最新の情報やご自身の具体的な状況については、必ず税務署や税理士などの専門家にご確認ください。ご自身の保険契約を確認し、確定申告を活用して適切に税負担を管理することを検討してみましょう。