あなたが選んだ保険、保障と節税は両立できる?バランスの考え方を分かりやすく解説
保険選び、保障と節税効果のバランスをどう考える?両立のヒントを解説
保険は、万が一のことが起こった際や、将来に備えるための大切な「保障」として加入される方がほとんどかと存じます。しかし、保険には保険料控除という制度による「節税効果」があることも広く知られています。
保障内容を最も重視して保険を選ぶのは当然のことですが、同時に節税効果も賢く活用したいと考えるのは自然なことです。では、保障と節税効果、この二つのバランスをどのように考え、ご自身の保険契約に活かしていけば良いのでしょうか。ここでは、保障をしっかり確保しつつ、節税効果も適切に享受するための考え方とヒントについて解説します。
保険の「保障」の役割を改めて確認
まず、保険に加入する本来の目的である「保障」について改めて確認しておきましょう。保険は、将来起こりうる様々なリスク(死亡、病気、ケガ、介護など)に対して、経済的な備えをするための金融商品です。
死亡保険
契約者が亡くなった場合に、遺されたご家族が経済的に困らないよう、保険金を受け取るための備えです。
医療保険・がん保険
病気やケガで入院・手術をした際に、医療費の自己負担分や、それに伴う収入減などを補うための備えです。
個人年金保険
老後の生活資金を計画的に準備するための備えです。
このように、保険は「もしも」の時の経済的な不安を軽減し、安心して暮らすための土台となるものです。保険選びの際は、まず「何のために保険に入るのか」「どんなリスクに備えたいのか」「いくらくらいの備えが必要か」といったご自身のライフプランやニーズを明確にすることが最も重要です。
保険料控除による「節税効果」の仕組み
保険には、支払った保険料に応じて税金が軽減される「保険料控除」という制度があります。これは、所得税や住民税の計算において、本来の所得から一定額を差し引くことができる仕組みです。所得から差し引かれる額が大きいほど、課税される所得が少なくなり、その結果として税金が安くなる、つまり節税につながります。
主な保険料控除には以下の種類があります。
生命保険料控除
一般的な死亡保険や生存保険、生死混合保険などが対象です。
介護医療保険料控除
医療保険や介護保険、先進医療特約などが対象です。
個人年金保険料控除
税制適格特約が付加された個人年金保険が対象です。
これらの控除は、それぞれに年間保険料に応じた控除額が定められており、所得税と住民税で控除される上限額が異なります。(例:新制度の場合、所得税では各控除で最大4万円、住民税では各控除で最大2.8万円など。合計控除額にも上限があります。)
年末調整や確定申告でこの控除を申告することで、税金の負担を軽減することができるのです。
保障と節税効果、両立のための考え方
では、保険の「保障」と「節税効果」をどのようにバランスさせれば良いのでしょうか。
1. 保障は「目的」、節税は「結果」と考える
最も大切なことは、保険はあくまで「保障」を目的とした金融商品であるという認識を持つことです。必要な保障を確保することがまず優先されるべきであり、節税効果はその保険に加入したことによる「おまけ」や「付加価値」として捉えるのが良いでしょう。
節税効果が高いからといって、ご自身のライフプランやリスクに合わない保険に加入したり、必要以上に手厚い保障に加入したりすることは、本来の目的を見失うことになります。無理な保険料の支払いは家計を圧迫し、長期的に保険契約を維持できなくなる可能性もあります。
2. ご自身のニーズに合った保険の中から、節税効果も確認する
まずは、ご自身やご家族に必要な保障内容(死亡保障は必要か、医療費にいくら備えたいか、老後資金はどのくらい必要かなど)を検討し、それに合った保険種類や保険金額を絞り込みます。
次に、絞り込んだ保険がどの保険料控除の対象となるかを確認します。同じような保障内容でも、契約形態によっては控除の対象とならない場合や、新旧制度によって控除額が異なる場合があります。(例:学資保険は一般生命保険料控除の対象となる場合がありますが、貯蓄性を重視しすぎると控除額が少なくなることもあります。)
このように、必要な「保障」を満たす保険の中から、より節税効果が期待できるものを選ぶ、あるいは現在加入している保険の節税効果を正確に把握するという順序で考えることが、保障と節税を両立させる賢い方法と言えます。
3. 保険料と節税効果のバランスを数値で捉える(簡易シミュレーション)
保険料控除額には上限があります。例えば、新制度の場合、年間保険料が8万円を超えると、それ以上保険料を支払っても所得税の控除額は増えません(最大4万円)。住民税の場合は年間保険料が5.6万円を超えると、それ以上増えても控除額は最大2.8万円です。
仮に、所得税率10%、住民税率10%の方の場合、生命保険料控除(新制度)による節税額は、年間保険料8万円以上支払っている場合で、所得税が4万円 × 10% = 4,000円、住民税が2.8万円 × 10% = 2,800円、合計で年間6,800円となります。(他の控除や所得によって変動します)
年間保険料が数十万円、数百万円となっても、保険料控除による節税額には上限があるため、支払う保険料に対して節税効果が限定的になる場合があります。高額な保険に加入する際は、その節税効果だけでなく、本当にその保障内容が必要なのか、保険料負担は適切か、他の運用方法と比較してどうなのかなど、総合的な視点から判断することが重要です。
既加入者が保障と節税バランスを見直すヒント
既に保険に加入されている方は、ご自身の契約が保障と節税のバランスが取れているかを見直してみましょう。
- 加入目的と保障内容の一致を確認:
- 保険に加入した当時の目的と、現在のライフステージでのニーズは一致していますか。
- 必要な保障額は過不足ありませんか。
- 保険料控除の対象と控除額を確認:
- ご自身の保険契約が、どの保険料控除(一般、介護医療、個人年金)の対象か確認しましょう。(保険料控除証明書や保険証券に記載されています。)
- 年間保険料が控除上限額を超えているか確認し、現在の保険料支払いが最大の節税効果を得られている状態か把握しましょう。
- 家計全体における保険料負担を確認:
- 保険料の支払いが家計を圧迫していませんか。無理のない範囲で支払える保険料であるか確認しましょう。
- 保障と節税以外の視点も含めて検討:
- 解約返戻金の有無、将来の受け取り金額、特約の内容なども含め、総合的に契約内容を評価しましょう。
- 節税効果だけにとらわれず、ご自身の安心や将来設計に本当に役立つ契約であるかを見極めることが大切です。
まとめ
保険は、ご自身や大切なご家族の未来を守るための保障が主目的です。そこに、支払った保険料に応じて税金が軽減される保険料控除という節税効果が付随します。
保障と節税効果の両方を最大限に活かすためには、「まず必要な保障を明確にする」こと、そして「その上で、保障内容を満たす保険の中から節税効果も確認する」という考え方が有効です。節税効果だけを追求するのではなく、ご自身のライフプランや家計状況に合った無理のない保険料で、本当に必要な保障を確保することが、賢い保険選びの基本と言えるでしょう。
ご自身の保険契約について、保障と節税効果のバランスが適切か改めて確認し、必要であれば見直しを検討してみることをお勧めします。
なお、税法は将来的に変更される可能性があります。最新の情報やご自身の具体的な状況については、必ず税務署や税理士などの専門家にご確認ください。