あなたが支払った家族の保険料で節税!生命保険料控除の対象範囲と適用条件
あなたが支払った家族の保険料で節税!生命保険料控除の対象範囲と適用条件
日々の生活の中で、ご自身の保険だけでなく、配偶者やお子様、親御様など、ご家族の保険料を支払っている方もいらっしゃるかと思います。その家族のために支払った保険料が、実はご自身の税金負担を軽くする「節税」につながる可能性があることをご存知でしょうか。
生命保険料控除は、支払った保険料に応じて所得税や住民税の負担が軽減される制度ですが、その対象となる保険契約や保険料には一定の要件があります。特に、ご家族の保険料を支払っている場合には、「誰が」「誰の」保険料を支払い、「誰が」保険金を受け取る契約なのかが重要になります。
この記事では、あなたが支払ったご家族の保険料が生命保険料控除の対象となるための条件や、具体的な適用範囲について分かりやすく解説します。
生命保険料控除の基本的な仕組みとは
まず、生命保険料控除の基本的な仕組みを簡単におさらいしましょう。生命保険料控除とは、1年間に支払った生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の金額に応じて、ご自身の所得から一定額を差し引くことができる「所得控除」の一種です。この控除を受けることで、所得税や住民税の計算のもととなる「所得」の金額が減り、結果として税金が安くなる、つまり節税につながります。
この控除を受けるためには、年末調整または確定申告で手続きを行う必要があります。その際に必要となるのが、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」です。
あなたが支払った家族の保険料は控除対象になるのか?
生命保険料控除の対象となる保険料は、原則として「保険料を支払った者自身が契約者である保険契約」の保険料です。しかし、重要なのは「保険料を実際に負担した者」であるという点です。
たとえ契約者名義がご家族であったとしても、その保険契約の保険料をあなたが家計から実際に負担して支払っているのであれば、その支払った保険料はあなたの生命保険料控除の対象となる可能性があります。
ただし、対象となるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 保険料を実際に支払った者であること: 保険契約の契約者名義にかかわらず、あなたがご自身の収入から保険料を支払っていることが必要です。
- その保険契約等の受取人のすべてが、保険料を支払う者自身またはその配偶者その他の親族であること: 保険金や年金を受け取る人が、保険料を支払ったあなた自身か、あなたの配偶者、またはあなたと「生計を一にする」その他の親族であることが条件です。
この「その他の親族」には、あなたと生計を一にするお子様やご両親などが含まれます。
具体的にどのようなケースで控除が適用されるか?
いくつかの具体的なケースを想定して考えてみましょう。
ケース1:夫が妻の生命保険料を支払っている場合
- 契約者:妻、被保険者:妻、受取人:夫または妻
- 保険料支払者:夫
この場合、保険料を支払っているのは夫であり、受取人も夫または妻(夫の配偶者)です。妻が夫と「生計を一にしている」という前提であれば、夫が支払った妻の生命保険料は、夫の生命保険料控除の対象となります。
ケース2:親が子の生命保険料を支払っている場合
- 契約者:子、被保険者:子、受取人:親または子
- 保険料支払者:親
お子様があなた(親)と「生計を一にしている」のであれば、あなたが支払ったお子様の生命保険料は、あなたの生命保険料控除の対象となります。お子様が独立して生計を別にしている場合は対象となりません。
ケース3:子が親の生命保険料を支払っている場合
- 契約者:親、被保険者:親、受取人:子または親
- 保険料支払者:子
ご両親があなた(子)と「生計を一にしている」のであれば、あなたが支払ったご両親の生命保険料は、あなたの生命保険料控除の対象となります。例えば、ご両親が高齢で収入がなく、あなたが生活費などを援助しており、結果としてご両親の保険料も負担しているようなケースです。ご両親がご自身の収入で生計を立てている場合は対象となりません。
「生計を一にする」とは?
税法上の「生計を一にする」とは、「同じお財布で生活している」といったイメージです。必ずしも同居している必要はありません。例えば、親元を離れて暮らすお子様や、入院中の親御様に対して、生活費や学資金、療養費などを常に送金している場合など、明らかに生計の状況が一つであると認められれば、「生計を一にする」とされます。
保険料控除証明書の名義と申告者について
生命保険料控除証明書は、原則として保険契約の「契約者」宛に発行されます。しかし、前述の通り、控除を申告できるのは「保険料を実際に負担して支払った者」です。
例えば、契約者が妻で保険料支払者が夫の場合、控除証明書は妻の名前で届きます。しかし、夫が保険料を支払ったのであれば、夫がその控除証明書を使ってご自身の年末調整や確定申告で生命保険料控除を申告することになります。
この際、ご夫婦それぞれが同じ保険契約について控除を申告することはできません。どちらか一方が支払った保険料として申告することになりますので、二重申告にならないように注意が必要です。
具体的な節税効果のイメージ
生命保険料控除による節税額は、支払った保険料の金額と、ご自身の所得税率・住民税率によって異なります。ここでは、年間の保険料支払額に対する控除の上限額の目安を示します(新制度の場合)。
| 保険の種類 | 年間支払保険料 | 所得税控除額(上限) | 住民税控除額(上限) | | :---------------- | :------------- | :------------------- | :------------------- | | 一般生命保険料 | 8万円超 | 4万円 | 2.8万円 | | 介護医療保険料 | 8万円超 | 4万円 | 2.8万円 | | 個人年金保険料 | 8万円超 | 4万円 | 2.8万円 |
例えば、あなたがご自身の生命保険料(一般生命保険料)として年間8万円を支払い、さらに、生計を一にする配偶者の生命保険料(一般生命保険料)として年間8万円を支払っており、その両方をあなたが負担している場合を考えます。
この場合、あなたの生命保険料控除の対象となる一般生命保険料の合計額は年間16万円となります。しかし、生命保険料控除には上限があるため、控除額は所得税で最大4万円、住民税で最大2.8万円となります。
仮にあなたの所得税率が10%、住民税率が10%とすると、この控除によって軽減される税金は、所得税で4万円 × 10% = 4,000円、住民税で2.8万円 × 10% = 2,800円となり、合計で年間6,800円の節税につながる可能性があります。
ご家族の保険料も含めて支払っている場合は、控除の対象となる保険料の合計額が増えるため、ご自身の税金負担軽減につながりやすくなります。
既にご家族の保険料を支払っているあなたが確認すべきこと
もしあなたが既に配偶者やお子様、親御様などご家族の保険料を支払っているのであれば、以下の点を確認してみましょう。
- 誰の保険契約の保険料を、誰が負担して支払っているか: ご自身、配偶者、お子様、親御様など、それぞれどのような保険契約があり、その保険料を実際に誰の家計から負担しているのかを整理してみてください。
- その保険契約の受取人は誰になっているか: 受取人が、保険料を支払っているご自身、配偶者、または生計を一にするその他の親族になっているか確認してください。
- 生命保険料控除証明書は誰の名義で届いているか: 契約者名義と、実際に保険料を支払っている人が異なる場合があることを理解しておきましょう。
- 年末調整や確定申告で正しく申告できているか: 実際に保険料を負担した方が、忘れずに控除の申告を行えているか確認しましょう。
これらの点を確認することで、あなたが支払っている保険料が漏れなく生命保険料控除の対象となっているかを確認し、適切な節税につなげることができます。
まとめ
ご自身以外の家族のために支払っている生命保険料も、一定の条件を満たせば、ご自身の所得税や住民税の生命保険料控除の対象となり、税金負担の軽減につながる可能性があります。重要なのは、「保険料を実際に負担して支払っていること」と、「保険契約等の受取人が、その支払者自身または生計を一にする配偶者その他の親族であること」です。
もし、ご家族の保険料をあなたが支払っているのであれば、一度ご自身の保険契約と合わせて全体像を確認し、生命保険料控除の適用条件を満たしているか確認してみることをおすすめします。適切な手続きを行うことで、家計の改善につながるかもしれません。
ただし、税法は将来的に変更される可能性があります。また、ご家族の状況によっては「生計を一にする」の判断が難しいケースもあります。最新の情報やご自身の具体的な状況については、必ず税務署や税理士などの専門家にご確認ください。